茶の湯の刻を語るもの – 楽入窯 京焼・清水焼


茶道とは元来、時の権力者や豪商などが社交の場として茶を嗜むものだった。江戸中期以降、町人階級の経済的勃興と共に人々に広まり、現代は習い事として女性を中心に広く親しまれている。近年では、日々の暮らしの中で茶道を楽しむ女性たちを活き活きと描いた小説や映画、千利休をテーマにした作品などを通じて、茶道の奥深さ、美意識や世界観が改めて見直されている。

そんな茶道に欠かせないのが、茶碗である。中でも「楽焼」は、ろくろを用いず「手づくね」と呼ばれる伝統の技法で作る、同じものがひとつとない焼物だ。おおよそ400年前、千利休が瓦職人に依頼して作らせ、その不完全の美を愛したという。烏丸十条上ルにある楽入窯は、伝統を重んじながらも、その時々に移ろう人々の嗜好や新たな提案を盛り込みながら、多彩な作陶を行う窯元である。

主宰の三代目吉村楽入氏は、先代に師事した後、京焼清水焼の陶工として数々の作品を生み出してきた。曰く「作品ではなく、お茶のためのお道具ですから、使う人のことを考えて作ることが大切」なのだという。一つの芸術作品として鑑賞するのもいいが、茶碗である限りは、使ってこそなのである。楽焼は、使うほどに抹茶が染み込み、独特の風合いが増してくる。これこそが、利休の求めた美なのである。

作陶体験や茶道の体験

楽入窯では、多くの方々にお茶の世界を、そしてそのお道具としての楽焼を楽しんでもらいたい、という思いから、作陶体験や茶道の体験も行っている。京都で生まれ、茶の湯の精神に育まれた「楽焼」の世界。工房の傍らに設えられた茶室で、利休の精神世界に遊ぶ初夏の一刻を味わってみるのも一興かもしれない。


見学・盃制作体験(茶道体験付き)
お一人様4,320円/1時間/2日前までに要予約


見学・楽焼(茶碗)制作体験(茶道体験付き)
お一人様10,800円/2時間/3日前までに要予約

information

楽入窯 京焼・清水焼
京都市南区東九条明田町1
TEL:075-691-7919