岩倉具視 幽棲旧宅

幕末の混乱に追われた岩倉具視の居。
坂本龍馬も訪れた、閑寂な座敷で当時を偲ぶ

岩倉の静かな住宅街に佇む、岩倉具視幽棲旧宅。明治維新の立役者にもなった岩倉具視が、幕末の混乱期において尊王攘夷派に命を狙われ、約3年間隠棲した場所である。もとは江戸時代の大工の居宅で、当初は現在の附属屋にあたる建物だけだった。茅葺きの主屋、繋屋は岩倉具視が購入後に増築したものである。
鄰雲軒と呼ばれる主屋の座敷から、岩倉具視による「御手植えの松」を中心とした庭が見える。昭和3年に改修工事が行われ、それ以前の様子は定かではないが、丁寧に整えられた慎ましやかな苔庭は、大正硝子が使われた障子戸との調和も美しい。座敷の内部に目を向けると、床の間横に古色を帯びた襖絵がある。これは、改修を経ても当時より変わらず残されているもの。岩倉具視の隠棲後も人目を忍んで訪ねて来ていたとされる、大久保利通、中岡慎太郎、坂本龍馬も目にしたであろう襖絵だ。現在もうっすらと雀や竹の絵柄が確認できる。
主屋の東側には、岩倉具視の遺髪を収めた慰霊碑があり、遺品や明治維新に関する文書などを展示している対岳文庫も見どころだ。
見学時には10分の無料ガイドが申し込めるほか、専門的な知識を有するガイドが解説する別料金の岩倉コンシェルジュガイドもあるので、より深く知りたいという人はぜひ。
取材・文/junko ikeuchi
写真/ ©植彌加藤造園

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